YouTube文字起こし:深海魚になる当然の理由
こんにちは。今回は「深海魚にならないために」というテーマでお話しします。
これはまだ公開していないのですが、「鉄仮面先生」とのコラボ動画でも触れた内容です。動画の前に少し話しておこうと思います。
「うちの子は大丈夫」は危険な幻想
まず最初に言っておきたいのは、「うちの子は絶対に深海魚にはならない」と思っている人へ。「私は絶対にコロナにかからない」と言っているのと同じぐらいの危うさがあります。
中高一貫校に入ってから成績が下がってしまう、いわゆる“深海魚”になる子は、普通にいます。400人いれば400番の子もいるわけで、それ自体は自然なことなんです。
にもかかわらず、「そんな成績は許せない」と感じてしまう親御さんの方が、実は欲が深すぎるのではないでしょうか。
成績が落ちるのは「やってないから」
ただ、400番の子が全力でやってそれでも落ちてるのかというと、そうでもない。多くの場合、そもそも勉強していないんです。で、「なんで勉強してないの?」と思うかもしれませんが、ここには家庭の方針の問題もあります。
中学受験の段階で「将来のために高学歴を取って大企業に入って欲しい。そのために何百万もかけて中高一貫校に行かせる」と親が考えていたとしても、それを子どもと明確に合意できている家庭は少ないんです。
多くの家庭では、「高校入試に縛られない6年間を」「優秀な子たちとのびのびと」みたいな話をしている。そしたら、子どもはその通り「のびのび」してしまうわけです。
だから、もしも家庭で「入学後も気を抜かずやり続ける」としっかり話しているなら、「おい、やってないじゃないか」と言うのも理解できますが、そうでないなら子どもが遊び始めても仕方ないのです。
「この塾の宿題が6年間続く」と言っても…
たとえ「塾の宿題が6年間続く」と話していたとしても、現実には続かないことの方が多いです。
その理由は単純で、小学生の段階で「中学受験の勉強」をしているというのは、いわば懲役刑のようなもの。睡眠時間を削り、遊ぶ時間を犠牲にし、膨大な量の課題に取り組んでいるのです。
そんな負荷を中1以降もそのまま継続できるかというと、無理です。心が壊れます。
「入学したらすぐ鉄緑会に入れられた」「部活もできずに高負荷の勉強だけ」──そりゃ、心が折れる子も出てきます。
勉強漬けは一生続けられるものではない
中学受験期の猛烈な勉強は、「短期集中型」だから成立します。これは、たとえばボディビルダーの減量や、結婚式前のダイエットに似ています。そんな生活を一生続けられる人は、まずいません。
にもかかわらず、「6年間それを続けろ」というのは酷です。だからこそ、ソフトランディングが必要なんです。
部活もやる、遊びもする、その中で勉強もする──バランスの取れた日常に戻していくことが大切です。
教養の幅を持たせることが重要
ここで一つ強調したいのは、勉強だけがすべてじゃないということ。
たとえば、「読書をまったくしない子ども」は非常に危険です。読書を通じて得られる教養や語彙力、思考力は、後になって効いてきます。それは映画でも音楽でも人との関わりでも同じ。
要は、「触れ幅」なんです。いろんなことに触れて、人間としての厚みを持つことが、結局はその子の人生を支えてくれます。
ロボットじゃない。人間には“楽しいこと”が必要
僕自身、お酒を飲まないとやってられない時があります。人間は、何かしら楽しいこと・好きなことをやっていないと心が持ちません。
だからこそ、中学受験のような「修羅の道」は、期間限定であるべきなんです。「高校までずっと勉強漬け」なんて、普通の人間には無理です。
それでも「うちの子にはそれをやらせる」と思うなら、親もまずは「脂肪分なし・炭水化物なし」の食生活を8年続けてから言ってください。それができないなら、他人(=自分の子)にそれを要求するのは、やめた方がいい。
バランスの取れた受験を目指して
「うちの子は受験中も趣味を大切にしてた」という話も聞きました。そういうの、すごく良いと思います。
広島の中学受験は、東京に比べると「緩い」と見られがちですが、人としてのバランスを保てるという意味では、とても良い環境だと僕は思います。
東京では、子どもだけでなく、親のどちらかが壊れてしまうという話も聞きます。それだけ人が多くて競争が激しければ、人としてのバランスも崩れて当然です。
勉強だけでなく、人生全体を見よう
最後にひとつ。
「勉強さえしていればいい」という人がいますが、そういう子が読書もしない、映画も見ない、音楽も聞かない、友達と話も合わないとなってしまったら、どうでしょう。
そんな状態で本当に幸せになれるんでしょうか?
難関校に合格しても、その後こける人は多いです。
人格・教養・バランス、それらを含めて「その子の人生」を見てあげることが大切だと思います。