個別指導塾だけで中学受験できますか?
【中学受験】「個別指導塾だけ」で乗り切れる? 塾長が残酷な真実をお話しします
「個別指導塾だけで中学受験はできますか?」——これ、本当によくいただく質問です。お問い合わせが多いということは、同じことを考えている方がたくさんいるということ。今日はこの疑問に、塾長として正直にお答えします。私自身が個別指導塾をやっている人間が言うので、それなりに信用してもらえるはずです。
■ 結論:ほぼ無理です
いきなり夢のない話で申し訳ないのですが、結論から言います。「個別指導塾だけで中学受験」は、ほぼ無理です。
メッセージをくださる保護者の方は、皆さんよく考えていて、「いいとこ取り」をしようとされています。大手塾の競争が我が子に向いていない、人数が多くて放っておかれそう、習い事と週3回の通塾が両立できない——だから「週1回、個別塾でだけ勉強すればいいのでは」と。お気持ちはわかります。でも、そこには中学受験という競技の「物量」への誤解があります。
■ 理由①:そもそも勉強量が桁違いに多い
大手塾の生徒は、週3回授業を受けたうえで、その合間の日も大量の宿題をこなしています。「そんなの大変」と思うかもしれませんが、これは中学受験において最低限の勉強量なんです。
たとえばサッカーで「うちの子は週1回、パスの練習だけでいいです」と言って、試合で戦えるでしょうか。ドリブルもシュートも練習しなくていいんですか、という話です。
社会だけ見ても、日本地理(農業・水産業・工業地帯・各地方の特産)をやり、歴史を縄文時代から昭和まで通し、6年生では公民(憲法・国会・裁判・選挙・地方自治)。これを全部覚える。理科も電流・水溶液・人体・天体…。算数は特殊算(つるかめ算・植木算・旅人算・ニュートン算…)。この4教科を、細分化して身につけるために週3回通って、それでもギリギリなんです。
これを週1回・60〜90分の個別指導で終わらせる「からくり」など、存在しません。大手塾は人数が多いからダラダラやっているのではなく、2時間ぎっしり詰めても足りないからその量なのです。
■ 理由②:個別指導は構造的にコスパが悪い
これは資本主義の原理です。1人の先生が20人に教える集団授業なら、講師の人件費を20人で割れます。でも1対2なら2分の1、1対1なら丸ごと1人で負担することになる。だから個別指導は単価を高くしないと成り立ちません。
仮に大手塾と同じ授業量(2時間半×週3回相当)を個別指導でやろうとすると、とんでもない金額になります。私の塾で安く見積もっても、月6〜8万円はかかる計算です。大手塾が月4〜5万円なら、それより高くつく。お財布が持ちません。
■ 理由③:個別塾には「チェック機能」がない
大手塾には定期的なテストがあり、偏差値や順位が出て、クラスが上下します。一喜一憂はしますが、裏を返せば「サボるとクラスが落ちる」という緊張感で勉強でき、我が子の到達度を客観的にチェックできます。
個別指導塾は、こうした精度の高いテストをまず持っていません。自前で作れば膨大な手間がかかり、その分が月謝に跳ね返るからです。結局は外部模試を受けに行くことになります。
そして冷静に考えてください。「この地域はこうなっています」という社会の説明を、1対1でやるのと1対20でやるのとで、内容はほとんど変わりません。説明を聞くだけなら集団授業で十分なんです。
■ では、例外はあるのか
「ほぼ無理」と言いましたが、例外もあります。
ひとつは、自分で勉強できてしまう天才型のお子さん。予習シリーズの例題を見て「ああ、こういうことね」と自力で理解し、漢字も5分で覚え、わからない点はAIや親やYouTubeで自己解決できる。こういう子なら、「国語の記述だけ添削して」「算数の応用問題だけ教えて」とピンポイントで個別塾を使い、あとは独学で進められます。
もうひとつの現実的な折衷案が、**四谷大塚の「進学くらぶ」**です。集団授業の動画を家で見られるので、習い事の合間に視聴して宿題をこなせば、集団塾に通うのと同じ効果が得られ、週テストも受けられます。実は私の息子たちもこれで勉強しています。長男は集団塾には通わず、進学くらぶで進めて、できない部分だけ私の塾でフォローする形です。
■ 個別指導塾の「正しい使いどころ」
つまり個別指導塾の本当の強みは、ここにあります。
集団塾はカリキュラムが決まっていて、全体の半分が理解できたら次へ進みます。その中で「ここがどうしてもわからない」と取り残された我が子が、わからないまま宿題を「先生が割り算してたから割り算するんだろう」と暗記でこなす——これでは力になりません。そこで「なんでこうなるの? 一緒に考えようか」と、その子のペースで穴を埋める。これが個別指導の役割です。
集団授業で全体を進め、こぼれた苦手を個別指導で補う。 この組み合わせが王道です。だから個別指導塾を使うご家庭は、実はかなり投資をしているんです。
■ 最後に:覚悟のある方へ
世に出回る中学受験の話は、奇跡的に受かった良い話ばかりです。奇跡だから広まる。でもその裏には、その何十倍もの「うまくいかなかった話」があります。中学受験は、才能と覚悟と財力が必要で、投資しても報われるとは限らないゲームです。「なんだか良いらしい」というノリで始めるのはおすすめしません。
ひとつ補足すると、個別指導塾はピンからキリまであります。中学受験を教えられる講師はそもそも数が少ない。どんな先生が教えるのかは、必ず見極めてください。
辛口でしたが、間違ったお金と時間の使い方をしてほしくないからこそ、残酷な真実をお伝えしました。
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