集団塾だけで足りる子、足りない子の違いとは? 個別指導が「スピードを気にしない」理由【中編】
広島で個別塾を営むなるちゃんです。中学受験では、まず大手の集団塾に通うのが基本です。では、集団塾の授業だけで足りる子と、足りない子は何が違うのでしょうか。そして、足りない子に個別指導は何ができるのでしょうか。今回は、そのあたりを個別塾の立場から本音でお話しします。
集団塾だけで足りるのは「理想の生徒」
「大手の集団塾だけでいいじゃないか」と思われるかもしれません。そこで大事になるのが、理解度の問題です。
頭のいい子は、大手集団塾だけで構いません。授業を聞けば「なるほど、そういうことか」と分かり、家で問題集をやれば7〜8割は解ける。分からない問題があっても、答えを見れば理解できる。あるいは「次の授業で先生の説明をしっかり聞こう」と思って、聞けば分かる。こういう子は集団塾だけで十分です。
ところが、そういう子ばかりではありません。そもそも大手塾に通う子たちは、小学校の授業が余裕で、むしろ退屈なくらいの子たちです。その子たちの中でさらに差をつけるために、難易度の高い問題を扱っているのが集団塾で、そういう子ばかりが受けに来るのが難関校です。小学校では100点を取れていたのに、塾では「先生の言っていることが分からない」「どうしてそうなるのか分からない」となることがあります。
家に帰っても、宿題だから解かなくてはいけないけれど分からない。答えを見てもピンとこない。丸暗記するか、怒られないように答えを丸写しするかになって、テストでは30点を取ってしまう。前の席の子たちが「なるほど、面白い!」と言っている横で、何の話か分からない。そういう子が、集団授業の中には半分くらいいることもあります。
集団塾のデメリットは「分からなくなっても立ち止まってくれない」こと
集団授業で、全員のレベルをぴったり揃えることはほぼ不可能です。大手塾はクラスを習熟度別に細かく分けますが、それでもカリキュラムは「今週はつるかめ算」と決まっています。「このクラスは出来が悪いから、つるかめ算を2倍やろう」とすると、受験までに必要なカリキュラムが終わりません。できるのは、基本問題・練習問題・応用問題といった、扱う問題の質を変えることくらいです。
しかし、つまずく子は基本問題でつまずきます。クラスを下げてもあまり変わりません。SAPIXのように、基本から応用まで入った問題集を全員に配り、クラスごとに「ここをやりなさい」と指示する塾では、基本問題しかやっていない子は、応用問題が出る組分けテストで勝てず、クラスがなかなか上がらない、ということも起こるようです。
私も集団授業をやっているので分かりますが、先生がどれだけ工夫しても、結局は一定のペースで進むしかありません。誰かが「よく分からないんですけど」と言っても、立ち止まれない。立ち止まると、その日に進める予定のカリキュラムが終わらないからです。これは塾が悪いのではなく、学習指導要領に沿って進む小学校や中学校も同じです。むしろ学校の方が、子どもに考えさせたり発表させたりする時間があって、ゆっくりに見えます。それでも消化不良を起こす子はいるのです。
集団授業をやる側から言うと、いちばんできない子に合わせるとスケジュールが崩壊します。上位の子は「もう分かったから早く次に行って」と退屈しますし、7割が退屈すれば不満も出ます。逆に、上位のごく一部の子だけに合わせると、7〜8割が分からなくなって苦情が来ます。できるだけ真ん中に合わせつつ、上の子を退屈させず、下の子も時間内でフォローする。誰に当てるかは、先生の腕が試される部分です。基本問題は理解度の低い子に当て、難しい問題は賢い子に当てます。ただ、理解度の低い子にかまい続けると時間が消えるので、どこかで切り上げざるを得ません。
こうして集団塾は、全カリキュラムをコスパよく消化してくれます。その代わり、分からなくなっても待ってはくれません。これが大手塾のデメリットです。
理想の個別指導は「スピードを気にしない」
ここからが個別指導の話です。ただし、これから話すのは「理想の個別指導」で、どこの個別指導でもできているとは限りません。うちではやっています。
個別指導がいちばん気にしてはいけないのは、スピードです。できない子には2種類います。集団授業のテンポ感についていけない子と、どうやっても分からない子です。中学受験をするゾーンで後者の極端な子はあまりいません。前者の場合は、その子に合わせてゆっくり時間をかけ、具体例を交え、ヒントを出して導くと、「分かった!」となることがよくあります。代わりに時間はかかります。1問に30分かかることもあります。
よくない個別指導の例は、こうです。「こうなんだよ。分かる?」と聞くと、生徒はなかなか「分かりません」と言えず、うなずいてしまう。先生は「分かったね」と進めますが、実際は何も頭に入っていません。
うちは違います。「これはどういうこと?」と聞いたり、「こういうことなんだけど」と伝えたりして、生徒が「あ、そういうことか」となったら、必要なら図だけ描いてあげます。そして、大事な解き方を教えたあとは「あとは自分で解いてごらん」と任せます。ヒントの出し方がうまければ、1つ2つのヒントで「できた!」となることはよくあります。
私の指導はもっと極端です。算数で「分かりません」と持ってこられたら、まず「問題文を全部書き写して」と言います。図形の問題なら、問題集の図をノートにそっくり描かせる。グラフの問題なら、グラフをそっくり写させる。公立中高一貫校のグラフを読み解く問題や、理科のグラフ問題でも同じです。そのまま放っておくと、5割くらいの子が「分かりました!」となります。「じゃあやってごらん」と言うと、最後まで解けたり、(1)(2)(3)くらいまで解けたりします。途中で詰まったら「ここに気をつけてみたら?」と追加でアドバイスをします。
主人公はあくまで生徒です。その生徒のどこの理解が足りないのか、どこのイメージが足りないのかを補う。書き写させるだけで相当な時間を使いますが、その代わり、その子のペースで確実に理解させることができます。これが理想の個別指導のメリットです。その代わり、時間はかかります。
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