「過去問5周」は逆効果 ── 秋から差がつく勉強法と過去問の落とし穴①

「やれば伸びる」は幻想。使い方は2つだけ

皆さんこんにちは、広島で個別指導塾をやっている なるちゃん です。

夏休みも折り返し。「秋からどうしよう」と考え始める時期ですよね。今日は中学受験にしぼって、みんなが使い方を間違えている「過去問」の話をします。大学受験生にも通じる内容です。

先に、よくある光景を一つ。「過去問を何十年分も、5周やりました!」という方がいます。気持ちはすごく分かります。でも正直に言うと、これがいちばんもったいないパターンです。なぜそう言えるのか、順番に話していきます。

いきなり結論から言うと、過去問を過信しないでください。 「過去問をやれば偏差値が上がる」「過去問をやれば、今は合格点に届いていない子でも受かる」——僕はこれ、ほぼ幻想だと思っています。過去問は“やれば伸びる”ものではありません。

では過去問は何のためにあるのか。使い道は、大きく2つだけです。

1つ目は、いちばん精度の高い「本番シミュレーション」ができること。 今の実力で本番を受けたら受かるのか落ちるのか。サピックスオープンでも合不合判定でも、模試というのはオーソドックスな学力を測るために、いろんな問題をバランスよくミックスしています。ところが学校によって出題の癖がある。特に難関校はクセが強い。たとえば海城なら、社会で資料を読ませて「これはどういうことか論述せよ」と、国語みたいな出題があったりする。開成なら国語はほぼ記述だけ、いわゆる“弁当箱問題”です。模試には抜き出しや記号選択もあるので、そこはできても、開成の記述になった途端に手が止まる——なんてことが起きる。だから、まったく同じ問題で解いてみて、今何点取れて、あと何点足りないのかを見る。そのために使うわけです。

2つ目は、学校の傾向を分析して、必要な力を逆算すること。 この学校は基本を丁寧に聞いてくるのか、応用・思考力ばかり出すのか、見たこともない問題で思考力を問うのか。国語なら、早稲田中は記号選択が多め、渋幕は難しい記号選択が多い、桜蔭・開成・麻布は記述ばかり……というふうに傾向が違う。相手がこういう力を求めてくるんだと分かれば、じゃあ今この練習をしよう、と方向性が決まる。正直に言うと、この2つ目は過去問を“解かなくても”、分析するだけでかなりつかめます。

ここで押さえておきたい時期の感覚があります。小6の夏までは、受験生として押さえておくべき基本の学力や知識をつけていく段階です。そして秋になると、そのつけた力の中で「どの学校に行きたいのか」「最終的にどんな力が必要になるのか」を見て、自分の力をカスタマイズしていく段階に入る。基本の暗記を固めればいいのか、思考力なのか、記述力なのか、記号選択なのか。過去問は、その“方向づけ”のために使う道具なんです。

だからこそ、実力と自信がある人だけが過去問を使うべきだと僕は考えています。歴史がまだ全然入っていない、漢字も怪しい、算数の基本問題でつまずく、国語がそもそも読めていない——そういう状態で過去問をやっても、効果はほとんど期待できません。やるなら、まず基本の穴を埋めるのが先です。

そしてもう一つ、声を大にして言いたいことがあります。過去問は「2回以上」やらないでください。

過去問は、宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘のようなものです。一回きり、タラレバなし。最初の一回で勝負が決まる。2周目で点が上がったとしても、それは“慣れ”であって、実力ではありません。普段の塾のテキストなら、「できない→質問して理解→もう一回できるようにする」で、その問題1個ぶんの実力が確かに増えます。似た問題が未来に出てもできるようになる。でも過去問の2周目で点が上がっても、それは“復習の効果”であって、お子さんの算数が偏差値60から65に上がったわけではないんです。前は思いつかなかった手が今日は思いついた——人間は慣れますから点は上がる。でも、実力がいきなり3も5も伸びることはありません。ここを混同しないでほしいんです。

じゃあ正しい使い方は? 年度を分けて、時間を空けて解くこと。 5年分あるなら、月に1回ずつ。9月に50点、10月に60点なら「この1ヶ月で伸びた」と言えるし、9月50点・12月50点なら「相変わらずだな」と分かる。しかも一度解いても、2〜3ヶ月経てば人は忘れます。忘れた状態は、ほぼ“もう一回の勝負”。だから直前用に、まだ解いていない年度を残しておくのも大事です。逆に、9月に10年分を一気に解いて在庫がゼロ、というのがいちばんもったいない。9〜11月はまだまだ伸びます。過去問は12月・1月くらいでいい、というのが僕の考えです。

次回②では、いよいよ本題。「じゃあ秋からは何をすべきか」 です。実はここで、受験生は“勝ち組・負け組”に分かれていきます。大手塾のカリキュラムに素直に乗るべき人と、そうしてはいけない人。その見分け方と、秋からのNG勉強法をお話しします。

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