「分かる」まで時間をかける意味と、個別塾選びで気をつけたい「人」の問題【後編】
広島で個別塾を営むなるちゃんです。個別指導には、時間をかけて「分かる」まで寄り添えるという良さがあります。一方で、個別塾選びには気をつけたい落とし穴もあります。今回は、その両面を本音でお話しします。
「分かる」まで時間をかける意味
集団授業には、公式を「こうなっているから、こう覚えておけ」と丸暗記させる算数・理科の先生もいます。基本問題くらいなら解けるようになりますが、応用問題には手が出なくなります。「算数や数学は暗記だ」と言い切る人もいますが、それでは難関校には届きません。受け持ったクラスの出来がよくないとき、「なぜそうなるか」を教えても理解されず全員が10点になるくらいなら、解き方を覚えさせて全員40点を取らせた方が「仕事をしている」と見える。意図的か無意識かは分かりませんが、短期的には解き方を覚えさせる方が、それなりの結果が出ます。でも本当の意味では理解していないので、応用で手も足も出なくなります。
中学受験では、「植木算では、なぜ木が1本増えるの?」「速さを出すとき、なぜ距離を時間で割るの?」と、一つ一つに疑問が湧く子の方が、むしろ普通です。「はじき」の図で覚えれば済む話ですが、それが覚えられない。そこに時間をかけるのは遠回りに見えるかもしれません。でも、1問をしっかり「こういうことだよね」と理解できれば、類題が10問、20問と解けるようになります。無理やり暗記でやると、パターンを変えられた途端に解けなくなります。
だから私は、30分かけてでもきちんと理解させた方が、結果的に効果があると思っています。集団授業を軸にしていると、どうしても分からない部分や苦手意識が出てきます。そこをうまくフォローしてあげる。めちゃくちゃな天才にはなりませんが、「これってこういうことだったんだ」と、ある程度分かった状態までは持っていけます。ここに個別塾の存在意義があると私は考えています。
私が開業したころ、広島には、大手も含めて中学受験向けの集団塾がたくさんありました。そこに参入しても生徒は100人も集まらず、自分1人で100人は教えられません。ほかの先生を雇うノウハウもありませんでした。ですから集団塾は無理で、自分は個別向きだと思いました。同時に、集団塾に通う子たちにも、一人ひとり、苦手や困りごとがあるはずだと気づきました。そこに特化して教える人は広島にあまりおらず、だからこそ単価も取れるだろうと考えて起業したのが、今から20年前のことです。
個別塾の落とし穴は、結局「人」
ここまで個別塾の良さを話してきたので、あえて悪い面も話します。個別塾は結局「人」です。
集団授業なら、1人の先生が10人、20人を教えられるので、優秀な人を何人か集めれば塾として回ります。ところが、完全な1対1に近い個別指導になると、大量の先生が必要になります。そうなると、どうしても玉石混交にならざるを得ません。採用も育成も難しいですし、研修をしたところで、偏差値の高くない大学に通う学生が、東大の入試問題を解けるようになるわけではありません。東大の入試問題が解けるようになるには、高校生のときにそのレベルの勉強をしていなければ無理なのです。
よくあるチェーン系の個別指導塾は、公立中学から公立高校を目指す層を主な対象にしています。「『This is a pen.』って何ですか?」というレベルの質問もありますから、その辺の大学生でも教えられる、というモデルです。そのため、中学受験や難関中高一貫校の内容は教えられません。それでも「個別指導塾」を名乗っているので、指導の質はしっかり見た方がいいでしょう。
では、プロの家庭教師ならハズレがないのかというと、そうとも言えません。私自身も含めて、就職せずに1人で家庭教師や個別指導をしている時点で、どこか変わった人間でもあります。しかも、本当に優秀な人はすぐに枠が埋まります。枠が空いているということは、それなりの理由があると思った方がいいので、ここもまた難しいところです。
うちの場合は、広島大学医学部の学生を雇っています。「学生のアルバイトだから」と思うかもしれませんが、責任感を持ってもらう仕組みを作り、インセンティブもつけています。何より、高校生のときにどこまで勉強を極めたかという素質の部分が違います。極めた人は理屈が全部分かっているので、あとは「分からない子の目線に立ってどう伝えるか」を、1年半ほどかけて研修して仕上げます。肩書きは学生ですが、その辺の社会人講師より質が高いと思っています。
個別指導は本当に玉石混交で、お子さんに合うところを見つけるのは難しい。ただ、合う先生に出会えると、20点だった成績が50点ぐらいに上がることは、普通に起こりうる世界です。
結論:お子さんのタイプと状況で使い分けましょう
大手塾にも個別塾にも、それぞれメリットがあります。「そんなお金はない」と言われれば、その通りです。結局お金の勝負じゃないかと思われるかもしれません。私も「お金がないなら無料で」とはできません。クオリティの高いものを提供する以上、見合った対価をいただくのが資本主義だからです。
そのうえで言えば、真ん中か、それ以下で伸び悩んでいる子でも、いい個別指導やいい家庭教師に巡り合えれば、20点が50点になることはあり得ます。私も、そうした奇跡を何人も起こしてきました。華々しい合格実績には見えませんが、死にかけた病人を退院させるくらいの出来事だと思っています。
最後に、使い分けの目安をまとめます。
- 集団塾の授業で十分に理解できている子:大手の集団塾だけで大丈夫です。
- 個別を使いたいが、お金に余裕がない場合:大手塾一択です。
- 「まだ分かっていないところがあるのでは」「ここが分かればできるのでは」という子:それを分からせてくれる、質の高い個別指導に巡り合えれば伸びます。
課金を誘導しているように聞こえるかもしれませんが、タダで全員が幸せになれる世界ではありません。そこをご理解いただければと思います。
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