国語ができなくなる人の7つの傾向
東京大学出身で、国語指導のプロとして多数の難関校合格者を輩出してきた経験から、国語ができなくなる人の特徴をお伝えします。これらは「後で地獄に落ちる」行動パターンです。裏を返せば、これらを避ければ国語力は向上します。
1. 説明文から逃げて物語ばかり読む
「説明文はできないけど、物語ならできる」という人がいますが、それは国語ができない証拠です。
物語が簡単に感じるのは、自分の身の回りのことに近いから読めるだけ。本当に難しいのは物語文です。開成や桜蔭など難関校が物語を出題し、文中に書いていない心情まで説明させるのはそのためです。
説明文ができない理由は、論理構造や抽象的な話についていけないからです。しかし、説明文は「こうだからこう」という論理が明示されているため、本来は読みやすいはずなのです。
説明文から逃げている限り、国語力の向上はありません。説明文を読めるようになることが、自分の未来を開く鍵です。
2. 知らない語彙を気にしない
できない人ほど、文中の分からない言葉に対して「ここが分からないから教えてください」というアクションが少ないです。
理解しようと思って読んでいないから、分からない言葉があっても気にしない。質問しようともしない、調べようともしない。結果として、字面だけをなぞっているだけになっています。
語彙力を増やすには、辞書を渡すだけでは不十分です。大人が生きた言葉で「これはこういう意味でね」と教えてあげることが最も効果的です。
実践方法として、子どもの説明文を見て「この単語の意味を分かっているか」を全部チェックし、説明させてみてください。説明できない単語は、その場で教えましょう。短期的には結果が出にくいですが、長期的には大きな力になります。
3. 音読がダメ
音読には2つの重要な目的があります。
1つ目は、声に出して読ませることで、その人が文章を脳内でどう処理しているかが分かることです。理解できている人はスラスラ読めますが、理解できていない人は変なところでつっかえます。音読を聞けば、国語力が分かるのです。
2つ目は、脳へのインプット効果です。脳は基本的にインプットしたがりません。しかし、アウトプット(声に出す)することで、脳に情報が入ります。目で読むだけより、音読の方が脳への取り込み精度が上がります。
問題は、できない人ほど音読のスピードが速すぎることです。高速で読んでも脳に入りません。むしろ逆効果です。
改善方法は、助詞のところで息を吸いながら、ゆっくり噛みしめるように読むことです。「太郎は、公園で、花を摘んだ」というように、区切りながら読む習慣をつけると、理解度が劇的に変わります。
4. 記述が白紙
「記述はできないけど、選択問題や抜き出し問題なら結構できる」という人がいますが、それは国語力ではありません。
国語の本質は、文章を理解して自分の言葉で説明することです。書けない時点で国語力はゼロです。
選択肢や抜き出しで点が取れているのは、まぐれか、問題が簡単だからです。点数をかすめ取っているだけで、本物の国語力ではありません。難しい問題になれば、すぐに通用しなくなります。
さらに重要なのは、書くというアウトプットを決めることで、インプットの質が変わることです。「書こうとするから理解して頭に入る」のです。「頭に入れてないから書けない」のではなく、「書こうとしないから頭に入らない」のです。
記述を避けている人は、良いインプットが脳に入るはずがありません。できなくても、とにかく書く習慣をつけることが重要です。
5. 一発書き
解答欄にいきなり回答を書く「一発書き」は、部分点しかもらえない、またはバツをもらう原因です。
良い記述を書く方法は簡単です。下書きをして、何回も書き直して、良いものに仕上げてから解答欄に書くのです。
まず下書きで書き、質問を重ねながら情報を足していきます。「太郎が泣いた」から始めて、どんどん尾ひれをつけて情報を追加していくと、60字の設問に対して120字分の内容ができることがあります。
そこから不要な部分を削って、重要な要素を残しながら、筋肉質な60字に仕上げていく。これが本来あるべき良い記述の書き方です。
一発で完璧な回答を書こうとするのは、天才がやることです。天才でない限り、下書きとブラッシュアップが必要です。
6. 消しゴムを使う
「もっとこれも書かないとダメ」という時に、回答を消して一から書き直す人がいますが、これはもったいないです。
前に書いたことも残しておきながら、追加でどんどん書き足していくべきです。消してしまうと、前にあった要素が抜けることがあります。
前のものは残しながら、必要な要素をどんどん足していき、最終的に合体版を作る。それを字数に合わせて削り込むのが正しい方法です。
消しゴムを使う人と一発書きの人は、メンタルが似ています。一発で良い回答を書いて満点を取ろうと思っているのです。それは天才がやることで、普通の人がやるべきことではありません。
7. 保護者のダメ行動:「書いてあるでしょう」
保護者がよく言う「ちゃんと読みなさい、書いてあるでしょう」という言葉は、実は危険です。
確かに、あるレベルまでの問題は文中に答えが書いてあります。しかし、開成や桜蔭、東大の国語は「書いてあることしか書けない人はいらない」とばかりに、文中に書いていないことを言語化することを要求します。
「文中に答えがある」という声かけをしすぎると、子どもは思考停止して「文中のどこかから引っ張ってこよう」というコピペ猿ロボット人間になります。
話の論理展開や筆者の真意を考えずに、文中で言葉狩りをして、キーワードらしいものを解答欄に移植すればいいというゲームだと思ってしまうのです。
これは短期的には点数が上がりますが、長期的には国語力が育ちません。5年生や6年生になって問題の難易度が上がった時、急に成績が落ちるパターンになります。
「文中に書いてあることをちゃんと理解しなさい」は良いですが、「文中に書いてある言葉を拾って解答欄にぶち込みなさい」は、後で滅ぶ原因になります。
補足:塾のダメ指導
大手塾のカリキュラムは、問題文や設問の量が多すぎて、毎週新しい文章になっていくため、一回の授業で内容を深く教えられない構造になっています。
子どもはしっかり考える時間が与えられず、思考停止して考えない人になってしまいます。その中で点数をかすめ取るために、言葉狩りをするようになるのです。
塾という環境が、悪意なく、善意でやっているつもりで、実は国語ができない人を育ててしまっているケースもあります。
まとめ
これらの7つの傾向は、短期的には点数が取れているように見えても、長期的には国語力を損ない、「後で地獄に落ちる」原因になります。
本物の国語力とは、文章を深く理解し、自分の言葉で説明できる力です。テクニックで点数をかすめ取るのではなく、じっくり考え、書き直し、ブラッシュアップする習慣を身につけることが、真の国語力向上への道です。
