過去問の使い方5つの注意点

過去問の使い方5つの注意点

秋になり、過去問に取り組む時期になりました。しかし、過去問の使い方を間違えている人が非常に多いのが現実です。正しく使えば大きな効果がありますが、間違った使い方をすれば時間の無駄、下手すれば逆効果にもなります。

ここでは、過去問の使い方を「勝ち組編」と「負け組編」に分けて解説します。厳しいことも言いますが、これを知らずに入試本番を迎えるよりは良いはずです。

勝ち組と負け組の定義

まず、用語の定義をしておきます。

「勝ち組」とは、秋の時点で模試の偏差値や判定から考えて、志望校に受かる確率が40%以上ある人です。絶望的ではなく、やり方次第で逆転できる、良い戦いができる位置にいる人たちです。

「負け組」とは、合格率が40%にも届いていない人です。今の時点の偏差値や判定で言うと、受けてもほぼ確実に落ちる状態の人たちです。このままの成績が続くなら、志望校を変更する決断が必要なレベルにいる人です。

勝ち組編1:本番慣れ

過去問の第一の目的は「本番慣れ」です。

模試は多くの受験生の実力を測るため、最大公約数的な問題になっています。しかし、学校ごとに入試問題には癖があります。

例えば、開成や桜蔭は「弁当箱」と呼ばれる記述中心の問題を出します。漢字以外すべて記述で、4行や5行の記述が求められます。このような形式は、1万人の実力を測る模試では使えません。

模試で高得点を取れたからといって、その学校の特殊な形式に対応できるとは限りません。逆に、模試の問題しか解いていない状態で本番を迎えて「こんな問題が出ると知らなかった」となれば、それだけで不利になります。

だからこそ、過去問を解いて学校の問題形式に慣れる必要があるのです。

過去問は基本的に1発勝負です。例えば2016年の過去問を解くなら、自分がタイムスリップして2016年の受験生になったつもりで、1回きりしかない入試を受けてみる。時間もきちんと測り、何点取れるかを確認します。

取れた点数をその年の合格基準に照らし合わせて、合格水準に達しているか、達していないなら何点足りないのかを測ることで、自分の立ち位置を知るのです。

勝ち組編2:学校からのラブレター

過去問は「学校からのラブレター」です。ドラゴン桜でも言われていた表現ですが、これは本質を突いています。

学校が出してくる問題には、その学校の思想が現れています。

桜蔭や開成なら「記号選択や抜き出しのような問題は本物の実力と認めない。本当に理解しているなら書いてみろ。自分の言葉で説明してみろ。それができる人が本当に力がある人だ。うちはそういう人に来て欲しい」というメッセージです。

逆に、早稲田中のように記号選択が多い学校は、それはそれで学校なりの考え方があり、「国語はこういう能力があれば良い」という判断をしているのです。

過去問を解くことで、この学校はどういう能力を求めているのか、どういう問題を出してくるのか、どういう人が欲しいのかを感じ取るべきです。

その上で、自分がその学校の求めているものと相性が悪いと思ったら違う学校を受けてもいいし、逆に「この学校は私のような人間を求めている」と思ったらより目指していけばいい。

もし求められている能力に達していなくても、何が何でもこの学校に行きたいと考えるなら、求められているものが分かったのだから、今から勉強の内容を修正すればいいのです。

実は、過去問は春の段階で見ておいた方が良いです。解かなくてもいいから見ておく。「こういう形式でこういうことを要求してくるんだ」と知ることで、自分の勉強の軌道修正に使えるからです。

過去問からフィードバックして、自分の日々の勉強をどうするか、これからどういうことをやっていかないといけないのか。足りているのか足りていないのか、足りないならどうしていかないといけないのか。過去問は計画全般に大きな影響を及ぼすツールなのです。

負け組編1:やる資格なし

厳しいことを言いますが、負け組の人は過去問を解く資格がありません。

勝ち組の人は、志望校に受かるかどうかのすれすれにいます。だから過去問の問題を解いても、できるかできないかのすれすれになります。

合格点が60点で現時点で50点なら、あと10点伸ばすためにどうしようかと考えられます。できなかった問題の中の10点をできるように変えればいいわけで、全部できなかったわけではありません。どこに可能性があって、その10点を取るために今からどういう勉強をしていけばいいかを考えていけます。

しかし、負け組の人は合格確率が低く、その学校の過去問を解く学力がありません。合格点付近を出す力がないのです。

そういう人が過去問をやっても、できない、できない、できない、10点、20点を取ってガーンとなって終わりです。意味がありません。

偏差値55の学校なのに偏差値40の人間ができるわけがありません。偏差値40ということは、今までの勉強でちゃんと身についていない、覚えられていない、理解できていないものがたくさんあるということです。

そういうレベルの人は過去問をやっても効果がありません。手も足も出ないからです。まず手か足が出るようになるために、受験生としての基本的なものを身につけるために時間を使った方がいいのです。

負け組の人は、そもそもその学校を受けるかどうかを考え直した方が良いです。あまりに届かないなら、もっと現実的な学校にして、その学校の過去問を解く方が効果的です。

それでもどうしてもその学校に行きたいというなら、過去問ではなく、足りていない基本から身につける勉強に舵を切るべきです。

負け組編2:何のために過去問をするか考えろ

よくあるのが、何のために過去問をするかを一切考えていない人です。

「みんなが過去問をやっているから自分も過去問をやる」とか、「過去問をやれば力がついて合格する」と思っている人がいますが、違います。

過去問を解いても、力そのものは伸びません。

過去問を解いて合格する人は、過去問が解けるレベルの実力があって、解くことで「もっとこういう勉強をしないといけないんだ」と修正をかけて、本番慣れをして、過去問の効果が出るようなゾーンにいるから、過去問を使った勉強で効果を出して受かっただけです。

やればいいというものではありません。過去問をすることが目的になってしまっている、思考停止してしまっている人が多いのです。

やる資格がない、学力がない人はやっても効果がなく、下手したら逆効果になるし、時間の無駄です。足りない力をつけるための勉強をするか、まだ勝負になるところの学校の過去問に変えた方が良いです。

勘違い行動:過去問5周問題

過去問に関する最大の勘違いは「過去問5周やりました」という人です。

過去問は、その年にタイムスリップして、その時の入試を仮想で受ける、1回きりの真剣勝負です。「今日調子が悪かったから、もう1回やり直し」なんてありません。

基本的には1回やったらそれで終わりです。できた、できなかったを採点して、そこからフィードバックして、他の勉強をどうするかに修正をかけるのは良いですが、5周もやったら問題を覚えてしまいます。

合格点が60点として、1回目が45点、2回目が55点、4回目で65点、5回目で75点取ったとしましょう。それで75点取れたら受かる実力があると思いますか?

信用できないですよね。1回目の何も知らない状態で受けて60点を超えているなら「受かる力があるね」と言えますが、5回目で取れた合格点は全く信用できません。

5回も解く暇があったら、1回解いて、3ヶ月経ったら問題を忘れるから、その間いろんな勉強をして力をつけて、3ヶ月くらい空けて解き直す方がよほど効果的です。

大手塾がその学校を想定した模試や類似問題を作ってくれるなら、そういうのをたくさん解くのは良いでしょう。違う問題を10回解いているわけで、慣れるという意味では効果があります。

しかし、同じ過去問を5回解いて合格点を超えたと喜んでいる神経は理解できません。

いつ過去問をやるべきか

過去問は基本的に1回きりしかできないので、あまり早くにやってしまうと直前にやるものがなくなります。また、実力がつききっていない状態でやると合格点が取れず落ち込むだけです。

できるだけ本番直前に取っておいた方が良いですが、本番直前過ぎると、過去問を解いて慣れていく時間や、フィードバックして復習していく時間が取れなくなります。

このタイミングは塾の先生と相談しながら決めてください。

ただし、最も重要なのは、その学校の過去問を解いてある程度勝負になるくらいの学力がついているという目途が立ってから解くべきだということです。

資格がない人が「みんなが9月にやっているから」という理由でやっても、全く効果がない勉強になります。過去問と戦える力がついている段階でやるべきです。

まとめ

過去問は正しく使えば非常に有効なツールですが、間違った使い方をすれば時間の無駄、下手すれば逆効果になります。

重要なのは、何のために過去問を解くのかを理解することです。本番慣れ、学校の求める能力の理解、自分の立ち位置の確認、これらの目的を意識して使いましょう。

そして、自分が今「勝ち組」なのか「負け組」なのかを冷静に判断し、それに応じた使い方をすることが大切です。

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