小5の壁【前編】

【前編】「小5の壁」の正体——小4まで順調だった子が、なぜ崩れるのか

小学4年生まではいい感じだった。偏差値も順位もまずまずで、「うちの子、御三家いけるかも」なんて思っていた。それが5年生になった途端、成績がどーんと落ちる。宿題が終わらず、毎晩ヒーヒー言っている——。

 

これが、いわゆる**「小5の壁」です。広島で浜崎アカデミーという個別指導塾をやっている、なるちゃんです。有料会員さんとの交流会でもよく出るテーマなので、前後編に分けて「壁の正体」と「越え方」をぜんぶ書きます。前編は、まず正体と原因**から。小3〜小4の保護者は心の準備として、小5でいま苦しんでいる方は「あるある」とうなずきながら読んでください。

「小5の壁」とは何か

ひとことで言えば、小4まで順調に回っていた受験勉強が、小5で急に回らなくなる現象です。偏差値が落ちる、組み分けで下のクラスに落ちる、そもそも宿題が終わらない。全部終わらせようとすると夜中までかかってしまう。「全然うまくいっていません」という小5のご家庭の声を、本当によく聞きます。

 

つらいのは、親のほうも「小4まではできていたのに」という記憶があるぶん、落差にうろたえてしまうことです。子どもを責めてしまったり、「うちの子は受験に向いていないのでは」と不安になったり。でも、これは多くの家庭が同じ場所でつまずく、いわば”通過儀礼”のようなもの。まずは「なぜ起きるのか」を冷静に分解してみましょう。原因は一つではなく、大きく3つあります。

原因① 地頭のいい子が、小5から入ってくる

小4のときは塾に来ていなかった、地頭のすごくいい子が、小5から参戦してきます。最初は受験勉強の独特さに面食らってついていけない。ところが地頭がいいので、数か月で順応してくるんです。

 

ここで効いてくるのが、算数のスパイラル方式。小4で習ったことは小6まで二度と出てこない、わけではありません。小4でつるかめ算を習っていれば、小5でその小5バージョンが再登場する。後から来た子も、その瞬間に理解してしまえば追いつける構造になっています。だから、適応してきた彼らに、いつのまにか抜かれてしまう。これが順位・偏差値が下がる原因のひとつです。

原因② 塾が「本気モード」に切り替わる

意外に知られていませんが、塾は小4では手加減しています。子どもの体力や成長過程を見て、通塾は週2回くらい。残りの5日は宿題でも習い事でも自由に使えました。テストも順位や単元の確認はあれど、まだそこまで激しくない。組み分けもマイルドです。

 

ところが小5になると、空気が一変します。「さあ、あと2年で受験ですよ。ここから気は抜けません。どんどん頭に入れていきますからね」というモードに、大手塾が切り替わる。授業は週3回に増え、自由に使える日は4日しかない。進度は速くなり、覚えるべきことも増えます。漢字も計算も語句も”もっとやれ”。理科社会も、小4までの「楽しく興味を持とう」から「あれも覚えろ、これも覚えろ」へ。

 

つまり、要求される勉強量が、どんと増える。小4はまだお遊びの要素もあったのが、小5から本気の戦いになる。だから、これまでのペースのままでは単純に処理しきれなくなるのです。

 

巷では「小5で学習量は1.5倍〜2倍になる」とも言われます。現場の感覚では、単純に倍とは言い切れない面もありますが、週3授業+自由に使える日が4日という構造だけ見ても、体感の負荷が一段上がるのは確かです。なかには寝る時間を惜しんで詰め込む子もいますが、これは止めたほうがいい。睡眠を削った先に待っているのは、後編で書く”小6の失速”だからです。

原因③ 習い事との両立が、崩れる

5年生は、ちょうどスポーツなどの習い事が楽しくなってくる時期でもあります。小4までは勉強と習い事を両立できていたのに、勉強量が一気に増えたことで、急に回らなくなる。勉強・習い事・体力、いろんなところで同時に負荷が上がるのが、小5という学年なのです。

「こなせない=受験に向いていない」のか?

辛口に言えば、こうも言えます。全部こなせて受かるのが受験だ、と。小4で順調でも小5で宿題が回らないなら、「小4が緩いゾーンだっただけで、本物の戦いになったら処理速度も地頭も足りていなかった」という見方は、確かにできてしまう。実際、小5の壁で絶望し、「もう無理だ」と中学受験を断念して高校受験に切り替える家庭は、少なくありません。「いつ撤退して高校受験にシフトすべきか」という相談も、よく受けます。

 

でも——ここで諦めるのは、まだ早い。こなせなくても、撤退しなくていいんです。崩れた子を救う考え方が、ちゃんとあります。鍵は「全部こなそう」という意識を手放すこと。その具体的な越え方は、後編でぜんぶ書きます。

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小5の壁【後編】

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