中学受験は“教育虐待”なのか?①

【第1回】中学受験は教育虐待なのか?──“うちはちゃんと寝かせてますが落とし穴

そもそも「教育虐待」って何?

教育虐待という言葉があります。ざっくり言うと行き過ぎた指導のこと。やっている本人は「これは愛だ」「教育的指導だ」と思っているケースが多いのが、いちばん厄介なところです。

分かりやすい例で言うと、子どもが勉強しないこのままだと志望校に受からない「勉強しないと殴るぞ」と脅して無理やりやらせる。親からすれば「勉強は子どものためになるんだから、幸せにするために必要なこと」。要は昭和の体罰と同じ発想ですね。

殴るまでいかなくても、できないとほっぺたをつねる、髪を引き抜く。あるいは変化球で、トイレに行かせない、点が悪いとご飯を食べさせない、何かの罰を与える。これらも「教育で勝つ」という目的のために子どもに苦痛を与えている時点で、立派な教育虐待です。成果を出すために、虐待的な行為をしてしまう。これが教育虐待の正体です。

結論:中学受験=教育虐待ではない。でも陥りやすい

先に結論から言います。**受験すること自体は教育虐待ではありません。** ただ、教育虐待のようなことに非常に陥りやすいジャンルではある。だから気をつけましょうね、というのが今回の話です。

調べてみると、こんな例が出てきます。睡眠・休息の剥奪。宿題が終わるまで寝かせない。深夜0時を過ぎても勉強させ、23時以降の就寝が常態化。未就学児を朝45時に起こして勉強。体調不良でも「熱がなければできる」とやらせる。勉強中のトイレ禁止、ご飯を食べながら勉強。人格否定系だと「なんでこんなのもできないんだ」「失敗作」、バカ・アホと日常的に罵倒。GPSで居場所を管理、平日89時間の勉強を強制……。読んでいるだけでムカついてきますね。

いちばんの落とし穴:「長時間勉強」も虐待にあたるとされる

ここが本題です。調べて分かったのは、**長時間の勉強を強いること自体が、十分に虐待にあたるとされている**ということ。

ポイントは誰が決めているかです。本人が「受からないから頑張る、俺は夜遅くまでやる」と自分でやるならまだいい。でも、親が「宿題が終わるまで寝ちゃダメ」と睡眠時間を削るのは、十分に虐待にあたるそうです。

「いやいや、うちはちゃんと寝かせてますよ」という人もいます。でも、**睡眠以外の全ての時間を11秒も無駄にせず勉強に充てなさい、というのも虐待にあたります。** 「ガンプラを作る時間もないのかよ」という話です。本気で受験に取り組んでいる親ほど、殴らなければ虐待じゃないと思いがちですが、時間を極度に奪うこと自体が虐待なんです。

それ、セルフ懲役になっていませんか

考えてみてください。1日の全行動が制限されて、やりたいことが何もできない。これって刑務所と一緒ですよね。

刑務所も睡眠は取れるけれど、自由がない。「睡眠はあげるけど、起きている時間は全部これをやってね」と言われたら、自由になる時間がゼロ。物理的な牢屋にいるわけじゃなくても、毎日同じ道で学校に行って、帰ったら即「あれしなきゃ、これしなきゃ」。リラックスする時間も好きなことをする時間も一切ない。娯楽の時間がある分、むしろ刑務所の方がマシかもしれない。冗談抜きでセルフ懲役です。

僕はよく冗談で「中学受験は懲役2年、3年みたいなもん。終わったらちゃんと釈放して、それまでの償いをしてあげて」と笑いながら言うんですが、笑えない部分もあるんですよね。

睡眠を削るのは、脳と体の成長を止める

そして睡眠を削るのは、体調を崩すだけでなく、**本当に脳の発達に悪い。** これから脳も体も大きくしていく子どもの成長を阻害するんだから、言ってみれば間接的な体への傷害です。休憩がない、好きなことをする時間がゼロというのも、やっぱり懲役。「受験に勝つために全ての時間を投げ打て」と言った時点で、実はもう虐待だと、みんな認識した方がいい。

ちなみにうちの長男は、毎日楽しく漫画を読んでYouTubeを見てゲームをしながら、それでも四谷大塚のCSクラスを維持しています。「最近偏差値59、ちょっと下がったな」なんて言いつつ、ちゃんと回っている。これは絶対に虐待には当たりません。

6のラスト半年ならまだ分かる。でも小5から「受験のために全部の時間を勉強しろ、やらなきゃ殴るぞ」は十分に虐待です。後々、自己肯定感やメンタル(パニック障害のような形で)に影響が出ることもあると言われます。本当に人生を壊しかねないので、やめた方がいい。

次回は、**なぜ親はそこまでしてしまうのか。** 教育虐待に陥りやすい保護者の脳内を、塾長なりに分析してみます。

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